野良の覚書

シニアおばちゃんの日常雑記 まだまだ元気

「70歳死亡法案, 可決」読んでみた。

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「70歳死亡法案、可決」垣谷美雨 幻冬舎

センセーショナルなタイトルだ。

もともと2012年にハードカバーで出ていた本が文庫になって、また、本屋さんに並んだようです。あと数年で70歳になる身としては、ちょっとぎょっとする。

 

「70歳死亡法案」皇族を除いた、日本国籍を有するすべての者は70歳の誕生日から30日以内に死ななくてはならなくなる。安楽死の方法は数種類用意され、対象者がその中から自由に選べるよう配慮されるというもの。
これは本の表紙が新聞記事風のデザインでそこに書いてあった。

 

タイトルを見たときのとっさに出た感想。「70歳は早くないか」と、「これ安楽死とちゃいますやん」だった。ダメ、殺人はダメ。

 

良くも悪くも、社会制度の中の高齢者の存在についての、刺激的な本を期待してよんでみましたが、介護を舞台とした家族の成長小説だった。

あらすじです。
50歳台の専業主婦が、寝たきりの85歳の夫の母親を介護している。サラリーマンの夫も、引きこもりの息子も、娘も夫の義姉たちも、誰も協力してくれないばかりか介護の大変さをわかろうとしてもくれない。主人公がやるのが当たり前で、自分には関係ないと思っている。そこに70歳死亡法案が成立して、施行まであと2年。そしたら介護から解放される。そこから始まり、いろいろあって、主人公がキレて家出をすることにより、家族が変わっていくという話。

 

ありがちな話ですが、先日まで、一人介護をしてきた身としては、周りの理解度のなさにイラついたことなど、わっかるわ~。私の場合、実母だから、主人公のように、遠慮はなかったけれど。

 

この小説の結末にもあるように、介護は協力者がいて、家で車いすを使えるようにしたり工夫すれば、だいぶ楽になる。だけど、そこまで行くのが大変だ。私も、介護が終了してはじめて、こうすればよかったとわかったことや、後悔したことがたくさんある。経験しなければ方策はわからず、方策がわかった時には終了しているというのが介護だ。

プロは、頼りになるけれど、考えるのは介護される人のことで、介護する人の都合はあまり考えてくれない。最初のころ、何もわからない中、「見学に行きましょう、あれやってください、契約があります」って、いろいろ言われるのが辛かった。熱心なのはありがたいと思ったけれど、ケアマネから着信があると吐き気がした。一段落すると、格段に楽になるんだけどね。どうしたらいいか先が見えない不安と、わけがわからないままにやることの多さは結構キタ。
一人で全部やったらそりゃ、キレる。

 

だから、この本を「もう少しシステムを整えろよ」と歯がゆく思ったり、夫や息子や娘のいいぶんに「ふざけるなよ」とか、「義母のわがまま全部聞くことない」とか思いながら、共感しながら読んでいた。ハッピーエンドにほっとしながらも、介護はもっときついよなとつぶやきながら。

 

世話をするのも大変だけれど、介護はメンタルが大変なんですよ。特に、周りに当事者意識が欠けていると。